ピアノの音は、雪の音。
SNSにアップしたこの写真を見たピアニストの高橋全さんが連絡をくださって
全さんのピアノと私の朗読で、私オリジナルのおとなのための童話『雪女』の公演をしたのはもう随分前のことだけれど
その時に全さんが言っていたのが冒頭の言葉。
ドイツでピアノを学ばれていた時からずっとそう思われていたと。
雪の音のない音を愛していた私にとってそれは新鮮な発見で
音と音のあいだ——音のない音——を慈しむようにピアノを弾く全さんとのコラボレーションはとっても豊かな経験で
始まるまえに、「この公演が終わった瞬間に核爆弾が落ちてきて死んでも後悔しないように在ろう」と決めた私は
終わった瞬間、からっぽで、なおかつ全てが満たされていた。
その後数年が経ち、叔父が、ニューヨークとニュージャージーの境にある叔父のアトリエの周囲の森を風に乗って舞う雪の映像をつくったところ、その映像を見た音楽家(私は彼のことを芸術家でもあると思っている)の大島治彦さんがその映像を音にしてくださって
その音もまた、ピアノの音だった。
この映像を初見で観ながら自然と指が鍵盤の上を動いて生まれたとのこと
私は人のエッセンスやエロスを香りに変換するという作業をするけれど、景色を音に変換するってそれと同じで芸術のプリミティブな姿って思うし
初めてこの曲を聴いた時、私は、自分のお葬式でこの曲を流して欲しいなあと思った。
「不香の花( unscented flower )」って雪のこと。
日本語でも英語でも、語感も、見た目も、そしてその感覚も
とても美しい。
私はというと
香りのない花ではいられないけれど。
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